「ばね」とは、弾性変形により機械的エネルギーを吸収し、貯えそして放出することのできる物体である。
「ばね設計」は、たわみは過重に比例するという有名な「フックの法則」が適用される範囲内、即ち材料の弾性限内で、機械的エネルギーを伝えることを基礎としている。
ばね設計の基本は、単に一つの現象即ち「応力(Stress)」を取り扱うことである。応力が、「ばね」 をばねとして働かせるものである。蔓巻きの圧縮ばねや引張ばねでは、「捩り応力」を生じ、トーションばねと、 板ばねは、「曲げ応力」を生ずる。
ばね設計の理論的方法は、安全最大応力か、その近くの設計応力で、作動して、最も有効に利用出来るエネルギー容量で使用できるばねを設計することである。
設計応力が、材料の引張強さより非常に低い場合は、値段の高いばねとなり、反対に設計応力が高いと、ばねは、永久変形 Permanent Set をおこして、その作動特性が変わり性能を発揮出来なくなる。
曲げ半径の小さい蔓巻ばね、即ちばね指数(D/d)の小さいばねは、その内径部の応力集中のため設計応力をかなり低く取らねばならない。この現象のためには、「ワール」の修正係数(Wahl Curvature-Stress Correction Factor)を用いて計算される。
最大設計応力をJISでは、下記のごとくなっている。単位=kgf/mm2
①圧縮ばね : 硬鋼線・ピアノ線=引張り強さX0.50、リン青銅線=30、ステンレス鋼線=引張り強さX0.45
②引張ばね : 硬鋼線・ピアノ線=引張り強さX0.35、リン青銅線=30、ステンレス鋼線=引張り強さX0.32
注:引張強さは、その下限をとる。
アメリカばね工業会では、下記のごとく規定している。
①圧縮ばねと引張ばね : 硬鋼線・ステンレススチール=最小引張強さX40%、ピアノ線・オイルテンパー線・SUS301系ステンレス・ベリリューム銅=最小引張強さX45%
②トーションばねと板ばね : 硬鋼線・ステンレススチール=最小引張強さX75%、ピアノ線・オイルテンパー線・SUS301系ステンレス・ベリリューム銅=最小引張強さX75%
注:(1)圧縮・引張ばねは、捩り応力、トーション・板ばねは、曲げ応力
(2)トーションばね・板ばねは、すべての材料について、75%とする。
(3)これらの%は、通常の使用条件に対するもので、繰り返し荷重や通常でない使用条件の場合は、これらより低い値をとる。
蔓巻きの圧縮ばねの設計法は、捩り応力で働く「ばね」用の次の二つの基本的公式を主として使用する。
ここで、 | ||||
Κ=ばね定数 Ν/mm(=kgf/mm) δ(デルタ)=たわみ量 mm G=横弾性係数 Ν/mm2(=kgf/mm2) d=線径 mm D=平均径 mm P=荷重 Ν(=kgf) n=有効巻数 τ(タウ)=捩り応力 Ν/mm2(=kgf/mm2) κ(カッパ)=ワールの修正係数 τmax=最大捩り応力 Ν/mm2(=kgf/mm2) |
||||
|
「ワール」の修正係数 κ は、ばね指数D/d=C とする。
と次式で求められるが、あらかじめ計算された図表によっても求められる。
圧縮ばねを設計する場合の仕様書には、一つあるいは、それ以上の荷重、これらの荷重を受けた場合のばね長、使用箇所の寸法、および材質を決定する色々な要素がある。基本の方法は、公式(2)の最大許容応力が得られる 線径(d)を求めて、一番経済的(使用面積、重量および値段について)なばねを設計し、それから公式(1)により有効巻数(n)を決定する。
公式(2)で(d)を決定する場合に、もし平均径(D)が与えられていない場合は、(d)の試行の値を求めるため、D=外径として計算する。試行の応力を求める時、公式(2)の荷重(P)は、ばねにかかる最大荷重であらねばならない。即ち、密着時の荷重Ps=K(L-H)かあるいは、最大たわみの時の荷重である。
L=自由長
H=密着長を表す。
もし、最大たわみが指定されないときは、公式(1)でPsを使用する。
計算された線径(d)の採用出来る値で、ばね定数(K)により、公式(1)で有効巻数(n)を計算する。それから、総巻数(N)と線径(d)を用いて、密着長(H)を後ページ4-3で説明するの公式で求める。
密着長(H)における応力(τs)と荷重による応力(τ1)を Ps および P1 を用いて、夫々公式 (2)で計算する。「ワール」の修正係数(κ)を決定し、τs max および τ1 maxを決定する。これらの値を決まった線径(d)の最小抗張力に前述の材質別のパーセンテージを掛けた最大設計応力と比較する。
最大許容応力とワールの修正係数により修正された応力を比較すると、次の三つの場合のいずれかになる。
(1)τ1 max と τs max の両方とも最大許容応力より低い場合
応力は合格で、使用しても「へたり」は無い。しかしながら、もし τs max が、材料の最大許容応力より 極端に低い場合は、それは多少無駄な設計であるから、その時は、コイル径(D)を小さくするか、或いは有効巻数(n)を減らして再検討する。
(2)τ1 max が最大許容応力より低く、τs max は以上の場合
ばねは、第一取付寸法(L1)ではへたらないが、ただし(L1)と密着長(H)間で、ある大きなたわみを与えた 場合は、へたるだろう。もし、ばねが使用中あるいは、組立の際(L1)以上にたわまされる場合があれば、応力を減らすために線径(d)を増やすと共に、有効巻数(n)を増やさねばならない。あるいは、使用箇所 が許すならば、コイル径(D)を増やす。さもなければ、ばねを予め「セッティング」することが出来る。もし、たわみが決して(L1)を越さないならば、原設計は使用可能である。
(3)τ1 max も τs max も最大許容応力以上の場合
ばねは、与えられた仕様では不可能のもので、指定の荷重(P1)に達する前にへたるだろう。基本的な解決法 は、ばねの材料の量を増加する(エネルギーの量を増加する)。これは、有効巻数(n)およびコイル径(D)を増やすことになり、そこで公式(1)で線径(d)を増やし、公式(2)で捩り応力(τ)を小さくすることになる。 しかしながら、もし τs max が材料の最小抗張力の60%より小さい時は、ばねメーカーか、あるいは使用者により組立の際に予め「セッティング」して使用される場合もある。
圧縮ばねは、製作が一番容易なばねであって、他のタイプのばねより早く、そして正確に作ることが出来る。
そこで使用出来る場合は、他のタイプより先だって使用しなければならない。
座巻きのない、或いは座巻きのないものを研磨したばねの使用は避けること。
このようなばねは、出荷の際、通常からみあう。又、たわまされた時倒れる。
可能な限り座巻きがあるが研磨しないばねを使用する。
特に、線径が0.8mm以下のばね、或いはばね指数(D/d)が12或いは以上の場合はそうである。
研磨作業は、遅く金のかかる作業である。そこで倒れ角度3度以上を指定して、研磨作業を廃止した方が安くできる。
重要なばね、そして、ダイヤフラムや調整バルブに使用するばね、或いは、倒れが起こるようなばねには、座巻きがあって研磨したばねを規定し、そして直角度を指定する。
短い密着長が必要な時、そして、倒れやサージングを減らす時には、円錐ばねを使用する。
標準の蔓巻ばねが使用される時は、円錐ばね、たるばね、或いは他の特殊な形状のばねの使用は避ける。
ばねは、他の装置に適合する如く、密着に圧縮された時、合理的安全応力である如く設計する。
巻き方向は、若し重要でなければ、右巻き左巻きを指定しない。
若しボルト上にねじ込んで使用する場合は、右巻きを指定する。
もしばねを二重に使用する時は、コイルが噛み合わないように一つは左巻き他は右巻きに巻かねばならない。
たわみを規定するよりも正確な圧縮高さで、公差のある荷重を規定する。
荷重試験機は、規定の高さでテストするように設計されている。2個或いは以上の荷重を規定すると、自動的にばね定数を規定することになる。
若し出来るならば避けるべきであるが、重要なばねでは、しばしば必要である。ばね定数は、2つの荷重の差をこれらの荷重間のたわみで割ったものに等しい。
並んで立っている3個のばねは、1個のばねの3倍のばね定数と密着荷重を持つ。
3個をつないだばねは、ばね定数は、1個のばねの1/3となり、そして、密着時の荷重は1個のばねのそれと同じである。
ばねは、しばしば機械の部品中一番安価なものであるが、一番トラブルの原因ともなる。
(若し疑問があるならば)正確な線径や巻数は、ばね製造業者の選択にまかせて、指定の要求を規定する。そうすると、業者は、ストックの材料が使用出来て、コストが安くなり、又出荷も早くなる。
ばねの図面或いは注文書に、高温或いは低温、腐食環境、衝撃荷重、そして疲労寿命或いはたわみ回数等の如き異常な条件を規定する。
圧縮ばねとは、軸方向に加えられた圧縮力に耐えるコイル間の開いた蔓巻ばねである。通常一定径の円筒状に巻かれるが、 円錐、つづみ形、樽形等にも巻かれる。
アメリカでは、指定規格 Mandatory Specification として、自由長、外(内)径、荷重、あるたわみ間のばね定数 、密着長、巻き方向および端末の形状が指定される。勧告データー Advisory Data で、線径、平均径、有効巻数、 総巻数が指定される。特別指示事項 Special Information として、材料の種類、表面仕上、直角度、圧縮回数(C.P.S)作動長さの範囲、使用温度、使用目的その他がある。
これらにより、重要な要求は管理され、しかもこれらの要求内で、ばねメーカーは、出来るだけ多くの設計に対する柔軟性が与えられている。
圧縮ばねは、巻き加工で生じた残留曲げ応力を取り去るために、応力除去 (ストレスレリーピング) をしなければならない。
圧縮ばねは、設計の応力水準により、次の3つに分類される。
(1) 永久変形を起こさずに、密着迄使用出来るばねで、変形を無くするため、余分の作業は行わない。このばねは、密着長迄圧縮した時、応力が材料の最小引張強さの40%を越さないように設計したものである。
(2) 最初に「セッティング」をした後は、それ以上の永久変形を起こさずに、密着まで圧縮できるばねである。これは、材料の最小引張強さの60%を越さない捩り応力で設計したものである。
(3) 完全な「セッティング」が出来ぬため、密着迄圧縮すると、いくらか多い永久変形をするばねである。 これは、材料の最小引張強さの60%を越す応力水準であるから、ばねメーカーは、これに対しては、通常仕様変更を要求する場合があります。
(1) 少量ばねをたわませ、荷重(P1)とばね長(L1)を測定する。
(2) 前より多くばねをたわませ、荷重(P2)とばね長(L2)を測定する。この場合座巻き以外のコイルは、L2では、接触しないように留意する。
(3) ばね定数Kを求める。
●圧縮ばねの端末の形状による寸法特性を計算する公式を下表に示す。
圧縮ばねは、その両端が常に直角であるごとく、いつも圧縮したり、又研磨することは不可能である。
このほかに、端末に近い蔓巻角は、均一な角度でなく、又座巻きの張力も均一でない。そして、ばねは、荷重をかけた時、全てのコイルが同様に圧縮出来る程、正確に巻くことは不可能である。
これらの端末の影響のためにばね定数は、たわみ範囲の最初の20%は減少する傾向があり、しはしば計算値 より低く出る。反対に、たわみの最後の20%では、コイルが漸次に圧縮される時、増加する傾向がある。従って、たわみ範囲の60%のばね定数は、本質的に直線である。従ってばね定数は、この範囲に指定しなければならない。
取付場所が許すならば、座巻きがある方が、直角度は遥かに良好で、そして僅かのコストの上昇で、ばねがお互いからみつく可能性もへる。
座巻きがある場合、直角度は、ばね指数(D/d)の関係できまる。ばね指数が小さく研磨されないばねは、直角度が悪いが、ばね指数が大きく、研磨されないばねは、直角度が良い。
座巻きのある圧縮ばねは、研磨なしでも良く作動する場合があるが、特に線径が0.8mmより小さく、あるいは、ばね指数が12以上の場合がそうである。
直角度を良くする為、次の様な場合は、研磨が要求される。
(1)バルブスプリングのような高度の役目をするばね
(2)荷重とばね定数の公差が通常よりも厳しいばね
(3)密着長が、最小寸法でなければならないばね
(4)正確な座りと均一な支持圧が要求されるばね
(5)ゆがむ傾向を減らさなければならないばね
ばねは、たわみ易くそして、外力は、端末を傾ける傾向があるので、極端に直角に研磨することは困難である。
蔓巻きの引張ばねの設計法は、圧縮ばねの場合と同様に、捩り応力により働くばねに対する2つの基本公式を主として取り扱う方法である。
符号は、圧縮ばねと同じである。
基本の設計法は、圧縮ばねと同様に最大荷重(P)、試行の平均径(D)および捩り応力(τ)を基礎として上式(2)により 線径(d)を計算する。有効巻数(n)は、仕様で決まっているばね定数(K)および計算された線径(d)と平均径(D) を用いて決められる。
それから初張力を計算し、その値が通常のばね製造技術で得られるかどうかを決める。仕様の要求について 長さをチェックした後、最終段階でワールの修正係数により、修正応力を計算し、これを材料の最大許容応力 と比較する。
(1)初張力(Pi)を次式で計算する。
(2)初張力による捩り応力(τi)を次式で計算する。
(3)計算された捩り応力(τi)および既知のばね指数(D/d)に対して、捩り応力が次の「グラフ」で、両曲線内にあるかどうかをチェックする。 (4)もし捩り応力(τi)が、両曲線内にあるならば、ばねは作りやすいと考えて良い。もし捩り応力(τi) が上の曲線より上にあるならば、少し大きい線径の線材を使用する。反対に、下の曲線より下にあるならば、 少し小さい線径の線材を使用する。次に捩り応力(τi)を再び計算し、新しい値を「グラフ」によりチェックする。
フックの正確な応力の計算は、複雑で手間を要する。丸フックや逆丸フック等の一般的フックでは、ばね体のコイルよりも大きな応力を受ける。主要な応力は、A点に於ける曲げ応力である。フックは、又A点とばね体のほぼ中間で小さい値の捩り応力を受ける。鋭く曲げられた場合は、捩り応力でフックは破損するが、もしうまく曲げられると、 破損は、A点の曲げ応力のみで破損し、その近似値は、次式で与えられる。
フックの曲げ応力
ここで、 | ||||
τb=曲げ応力Ν/mm2(=kgf/mm2) P =荷重 Ν(=kgf) D =ばね体の平均径 mm Di=ばね体の内径 mm d=線径 mm |
||||
|
引張ばねは、圧縮ばねより高価である。組立の際、余分に引き伸ばされることを考慮し、又フックの応力を減らす為に、約10~15%圧縮ばねより、応力を減らさなければならない。
引張ばねは、各コイルを密着させる為に、幾らかの初張力を持つように設計しなければならない。 初張力のないばねは、巻くことが困難である。そして、初張力のない長い大きなばねは、垂直で検査した時より水平位置では、長さが異なる。少なくとも最大力の10%は、初張力でなければならない。
丸フックは、約半巻き分に相当する荷重でたわむ。従って、2つのフックのたわみを考慮にいれて、公式で計算したコイルの数から1巻きを減らす。もしこれを考慮しないと、10巻きのばねは、荷重が10%低くなる。半丸のフックは、1巻きのほぼ1/10に等しくたわむ。
正規の丸フックでは、フックの内側からばね本体迄の距離は、内径の約75%~85%である。この減少は、ばねの中心上角度位置に全直径を曲げるためである。設計時は、これを考慮する必要がある。
もし重要でなければ、フックの相互の関係位置は、指定すべきでない。ばねメーカーは、もっと重要な荷重や たわみの要求にあうように、ほんの僅かな位置を変えなければならない。できるだけ大きな長い又は、特殊なフックの使用をさける。これなどは、ばねのコストを高価にする。
フックが正規のコイルを曲げ上げることによって、作られるように、フックの外径は、ばねの外径と同じ寸法にする。フックの隙間は、小さな公差をつけてはいけない。フックの破損を減らす為の差込フックや円錐形のフックは、コスト高になるフックである。外径を減らしたフックならコスト安となる。
引張ばねの体長、即ち密着部分は、密着コイルの数に1を加えて、線径を掛けたものに等しい。
電気メッキで、コイル間あるいは、内径には、メッキがよくつかないが、水素脆性の量を高めるので、メッキ中は、引き伸ばしてはいけない。
たわみ量でなく、フック間の距離における荷重を規定する。これは、試験機がそのような構造になっているからである。
コイリングで生じた残留応力をとる為に、引張ばねを加熱すると、初張力が50%だけ減少する。この減少に対する考慮を製造の際、注意しなければならない。
高温、衝撃力(ショック)、毎分のサイクル数、腐食環境そして、疲労寿命等の通常でない作動条件を図面に規定する。
もし応力が高く、余分に引き伸ばされる危険があるならば、引張り棒を取り付けた圧縮ばねの使用を考える。
2個以上の荷重が規定されると、自動的にばね定数とたわみが決まる。2つの荷重の試験には、コストも時間も大幅にかかることとなる。普通のばね公差を考えた正しい設計でこれを避ける必要がある。
引張ばねとは、適当な形の「フック」により、軸方向に加えられた引張り力に抵抗する蔓巻きばねのことである。引張りばねの最も顕著な特徴は、密着巻きに巻かれて、そして殆どのばねが初張力を有することである。
初張力とは、引張ばねをたわませない状態で、コイルが相互に押し合っているばねの内的力と定義される。 この力は、コイルが離れ始める前に、外部荷重により、消失しなければならない。初張力による応力も 計算にいれて、最大たわみの時の応力は、材料の最小引張り強さの約40%を越してはいけない。そうでなければ、引張りばねは、材料の捩り弾性限で制限されるから、永久変形する。
(1)ばねが伸びるが、コイルが離れない程の荷重をかけて、ばねの正確な最初の長さ(Li)をセットする。
(2)全てのコイルを開くに必要な長さより、わずか長目の長さ(L1)までばねを伸ばし、荷重(P1)を測定する。
(3)ばねをさらに第2の長さ(L2)に伸ばす。その時、L2-L1=L1-Liとなる、荷重(P2)を測定する。
(4)初張力(Pi)を計算する。
(1)初張力が全くなくなるまで、長さ(L1)迄ばねを引っ張る。そして荷重(P1)を測定する。
(2)ばねを更に第2の長さ(L2)迄引っ張る。そして荷重(P2)を測定する。
(3)ばね定数を計算する。
引張りばねの2つの最も普通のフックは、丸フック(Machine Hook,Twist Loop)と逆丸フック(Cross Loop,Cross Over Center Loop)である。これらの2つのタイプは、標準のかん立工具で作られ、コストを最少にする。もし、 使用方法により、要求があれば、コスト追加して、多くの特殊タイプフックがばねメーカーで作られる。
蔓巻きのトーションばねの設計法は、丸線の場合次の2つの基本公式で、トルク(M)をkgf/-mm,曲げ応力(τ)を kgf/mm2で計算する。
ここで、 | ||||
M=トルク kgf/-mm E=縦弾性係数 kgf/mm2 d=線径 mm T=たわみ率 θ/360(θ=たわみ角度) N=総巻数 D=平均径 mm τ=曲げ応力Ν/mm2(=kgf/mm2) |
||||
|
ばねの足が長ければ長い程又、曲げが複雑であればある程、「ツーリング」に手間が掛かり、又二次作業が増加する。従って、出来ることなら、短い真直ぐな足にするほうが良い。
トーションばねでは、一般に応力集中効果に対するワールの修正は、無視して行わない。使用時に、ばねの直径は減少し、ばね体の長さは、増加するから、設計の場合にこの寸法の変化を考慮しなければならない。
トーションばねは、使用時たわまされると内径が減少し、ばね長が増す。
設計の場合、心棒との隙間を考慮しないと、心棒と内径の摩擦により、ばねは破損する。たわみ後の内径は次式で求められる。
ここで、 | ||
Df=たわんだ時の内径 mm Di=自由時のばね内径 mm N =巻数 θ =たわみ角度 |
釣合い
ばね指数は、4から14の間が最良である。これより大きな値では、平均的公差よりも大きな公差を必要とする。 ばね指数が、3より小さいと自動ばね巻き機では芯金が破損する可能性が高いので、困難となる。ばね指数が小さいか大きいと、設計公式通りに正確な値を与えない。
巻き数
ばね指数が3より小さいトーションばねは、倒れやすく正確に試験することが難しい。30以上の巻き数であると、 心棒との摩擦で全てのコイルは、小さい荷重の場合、同時になわまない。作業員は、測定し易い1/8又は1/4に近い分数を持つ巻数が好みます。
心棒
トーションばねは、中心を通り抜ける心棒で支持されねばならない。もし支持されないかあるいは、クランプや突出部で支持されると、ばねは倒れ、トルクを減じ余分の応力を受けることになる。
直径の減少
内径は、たわみ中減少する。これは、計算されなければならない。そして、心棒との間に隙間がなければならない。同様に、正規のばね直径公差に対し、考慮しなければならない。
巻き
ばねのコイルは、密着又は、ゆるく巻かれるが、しかし密着にかたく巻いてはいけない。初張力を持った固く 巻いたばねは、均一にたわまない、そして、正確にテストすることが困難である。線径の約20~25%の隙間を持ったばねが、望ましいばねである。正方形と矩形の断面の線材は、巻くことが難しく、コストも高くなる。
巻き方向
巻き方向は、規定されなければならない。又、たわみは、ばねを巻きあげるように、そして巻き数がふえるように設計しなければならない。この巻き数の増加と全長の増加は、設計の際考慮しなければならない。巻き戻し方向にばねをたわますと、応力が高くなり、早期に破壊する可能性が高い。ばねをばね軸に見下した時、線材の方向が、 時計巻きにある時、あるいはコイルの角度が標準のボルトのネジに等しい角度を持つ時、これは右巻きであり、逆の時は、左巻きである。ばねは、標準の機械ネジにはめる時は、右巻きでなければいけない。
アームの長さ
トーションばねの全ての線材は、力がかかる点間で働く。長いアームのたわみは、力の点からばねの本体に接触する アームの長さの1/3を巻き数に換算することで求められる。もし、アームの長さが、1巻きの長さに等しいかあるいは、1/2長さより小さければ、殆どの使用で、アームの長さを考慮しなくてよい。
曲げ
アームは、出来るだけ真直でなければならない。曲げは、作ることが難しく、二次作業を要し、コストがかかる。 シャープな曲げは、応力の起点となり、早期に破壊する。
曲げ半径は、出来るだけ大きくしなければならない。フックは、たわみ中開く傾向がある。その応力は、引張りばねの場合と同じ方法で計算することがでる。
ダブルトーション
これは、左巻きと右巻きのばねを中央で連結したものと2つの別個のばねを使用したもの、そして線材を真ん中で折り それを巻いたばねとがある。いずれのばねも作ることが難しく、高価である。その中で2個の別個のばねをした場合、トルクと応力の計算では、各ばねを別個のばねとして別々に計算する。そして、トルクは、お互いを加えるが、たわみは、加えない。
端末が回転し、角度のたわみをするトーションばねは、外部より加えられたトルクに抵抗する。線材自身は、 トーションという名前より期待されるかもしれない捩り応力よりも、むしろ曲げの応力を受ける。この種のばねは、 通常密着巻きにまかれ、これがたわまされると、コイル径は減少し、自由長は増加する。設計者は、トルクが掛かった場合の摩擦の影響及び足のたわみを考慮しなければならない。
トーションばねの特殊タイプに、二重捩りばね(Double Torsion Spring)があり、このばねは、摩擦を最小にするために、コイル間にある間隔を持っている。このダブルトーションばねは、一つは、右巻きで他の一箇所は左巻きで平行に作動する。二つの部分は、トルクの2つの和がかかるものとして、各々部分について別々に設計する。
トーションばねの端末の形状は、注意深く考慮を要する。特殊の足を指定し、成形するには、多くの方法があるが、コスト高となり、ツーリングの値段も高くなる。
板ばねの形状は、非常に複雑であるが作動している時は、片持梁(Cantilever)と両持梁(Simple Beam)と考え設計すればよい。この2つのタイプの設計の基本的公式は、次の通りである。
ここで、 | ||||
P=荷重 Ν/mm(=kgf/mm) δ=たわみ mm E=縦弾性係数 Ν/mm2(=kgf/mm2) b=材料の幅 mm t=材料の厚み mm L=有効作動長 mm τ=曲げ応力 Ν/mm2(=kgf/mm2) |
||||
|
板ばねという言葉は、広範囲の部分を含み、帯鋼等からプレスで作られる。これらは、外部荷重によりたわまされると、 エネルギーを貯え、そしてエネルギーを放出する。複雑な形状をした打抜品の一部が実際には、ばねとして作用する。設計の場合は、ばねとして働く部分を独立の簡単なばねとして考え、残りの他方は一時的に無視する。
荷重(P)は、厚み(t)の3乗で変化するから、板ばね材料は、厚みのばらつきが最少でなければならない。
最も普通に使用される材料は、炭素鋼板であり、ステンレス鋼板が腐食抵抗を必要とする時使用される。そして燐青銅とベリリウム銅板が、高い通電性を必要とするとき使用される。
炭素鋼は、あらかじめ焼き戻しされたあるいは、焼きなましされた材料からつくられる。焼き戻しされた材料は、 曲げ加工の要求がシビヤでない所に使用され、成形後応力とり焼鈍をする。断面の大きいものや曲げの要求がシビヤなものは、焼きなまし材を使用する。この場合は、焼入れ焼き戻しをするが、熱処理で変形するので、冶具を使用するか又は歪取り作業が必要である。近年ベーナイト鋼が多く利用されるようになった。
通常矩形断面の材料から作られるスパイラルのトーションばねは、平面に巻かれ一般にピッチ巻きされる。 回転で生ずるトルクは、最初の360度は直線的である。大きな角度たわみでは、コイルが軸にくっつき始め、トルクは 急速に増加する。この理由のために、この種のばねでは、通常360度より少ないたわみで使用される。
スパイラルトーションばねで生ずるトルクの公式は、次の通りである。
ここで、 | ||||
E=材料の縦弾性係数 Ν/mm2(=kgf/mm2) θ=たわみ角を回転数で表す。 (θ=たわみ角÷360°) L=材料の有効長さ mm M=トルク(モーメント) kgf-mm b=材料の幅 mm t=材料の厚み mm |
||||
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スパイラルトーションばねに生ずる応力(S)は、曲げ応力でビームをたわます時の公式が使われる。
一般に使用されるスパイラルトーションばねは、材料の硬度によって、122.5kgf/mm2 から 140kgf/mm2 の応力で使用される。
取り付け軸の直径と自由時の外径(0・D・F)は、トルクや応力についての公式にはない。しかし、ばねが占める スペースは、設計の際、考慮しなければならない。非常に小さいばねは、設計のたわみに達する前に、軸にしっかりと巻きつく。もし、外径があまり大きいと、ばねは利用できるスペースに適合しない。
均一なピッチの同心円に基礎を置く次の公式は、自由時の外径(0・D・F)にほとんど近い値を与える。
動力ばねは、矩形断面の材料から作られ、平面に巻かれ両端に特別の取付孔か又は曲げを持っている。長さ対厚みの 比(L/t)が増加すると、コイル間のスパイラルなスペースは、急速に増加する。従って、ばねは、使用に当たって あるタイプのケースに収めなければならない。移動するコイルと軸に付いているコイル以外は、ケースに対して 固体(ピッチがない)である。軸が回転する時密着した材料は、ケースから引っ張られるとき働き、そして軸に 巻き取られる。働く材料の量は、常に変化し、ばねで出される一巻き当たりのトルクの公式を求めることは、むずかしい。
第1図に示すように、動力ばねのトルク(たわみ特性)は、直線ではない。この状態は、ばねがたわまされる時のコイル間の摩擦、有効に働く材料の変化量およびヒステリシス効果によって生ずる。
<設計の方法>
動力ばねの設計は、トルク(たわみ曲線)、ばねで生ずる回転数および最大トルクを求めることである。 第2図は、材料幅が25.4mm、弾性係数が、21,000kgf/mm2の色々な材料厚みに対する最大トルクを示す。 他の幅に対するトルクは、これに正比例する。(例えば、幅が12.7mmの時は、トルクは半分となる。)ばねのたわみ回転数(θ)と材料の有効長さ(L)は、次式で求める。
ここで、 | ||
Dh=ケースの内径 mm A =軸の外径 mm t =材料の厚み mm |
これらの公式は、軸径(A)とケースの内径(Dh)間の利用できるスペースの半分を、有効材料が占めるという最適の条件に基礎を置いている。この条件は、軸の最大回転数を与え、有効材料がこれより長いかあるいは、短いと軸の回転数を減らすことになる。又、軸径とケースの直径は、公式で既知のものとして仮定してある。もし、ケースの寸法がわからない時は、第3図のグラフが材料厚(t)に対するケース径(Dh)と希望の回転数(θ)を与えている。
スプリングワッシャーは、設計の小型化と非常にコンパクトな傾向のために、広範囲に使用されている。これらは、 一般のワイヤスプリング以上にスペースと重量の点で利点があり、そして装備費用を比較した時、より経済的に使用できる。これらのばねの用途は、締め金具をしっかり保持し、荷重を分配し、振動を吸収し、温度変化を補正し、側面そして、端末の遊びを取り、最終圧力をコントロールするために使用される。
設計の公式は、三つの基本のタイプとして、カーブしたワッシャー、ウェーブワッシャー、皿ばねのばね特性を決定するために作られている。いずれもこれらは、広い範囲の荷重条件に使用される。
特性
設計公式
荷重(P)と曲げ応力(S)に対する公式は、次の通りである。
これらの公式は、ばねに含まれる変化のため、大凡の値を与える。
ここで、 | ||||
P=荷重 N(=kgf) E=縦弾性係数 Ν/mm2(=kgf/mm2) f=たわみ mm t=材料の厚み mm h=自由高さ-t mm H=自由高さ mm S=曲げ応力 Ν/mm2(=kgf/mm2) |
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特性
設計公式
ここで、 | ||||
P=荷重 N(=kgf) E=縦弾性係数 Ν/mm2(=kgf/mm2) f=たわみ mm b=材料の半径方向の幅=(O.D.-I.D.)÷2 mm t=材料の厚み mm N=山数 D=平均径=(O.D.+I.D.)÷2 mm h=自由高さ-t mm H=自由高さ mm S=曲げ応力 Ν/mm2(=kgf/mm2) |
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これらの公式は、ばねに含まれる変化のため大凡の値を与える。0.25hから0.75hまでのたわみは、外径を増加し、そして、平均径D’は、次式で求められる。
皿ばねは、小さいたわみで比較的大きい荷重が要求される所で使用される。h/tの比を変えることによって、 荷重-たわみ特性が第1図に示すように変わることがわかる。
特性
設計(P)、底部内端の応力(S)及び定数(M,C1,C2)を求むる公式は次の通りである。
ここで、 | ||
![]() μ=ポアソン比(鋼は、0.3) In=自然対数 |
定数のM,C1,C2は、第2図の曲線から求めるか、あるいは公式を用いて計算される。
設計公式
第1図、各種h/tの比に対する皿ばねの荷重-たわみ曲線
もし、皿ばねが、その端で支持され、そして荷重がかけられると、ばねは、その平たい位置を通り越してたわまされるので、最大可能のたわみを利用することができる。水平位置を越しての荷重-たわみ曲線は、曲線の最初の部分と対称的であるから、曲線図は 水平を越してのたわみに対し、上下に読み取るように右と上に目盛られている。図からはみ出している点線は、 水平を越して曲線が続くことを表している。
熱膨張係数の異なる二種、又は以上の金属を一体に圧着した材料を使用して作られる。これは、温度差でコントロールされる装置に、種々の形状で使用される。
数種の形状について、設計の公式をあげる。
記号 |
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f=湾曲量 (mm) E=弾性係数 (kgf/mm2) α=たわみ=角度 (度) P=ばねの力 (kgf) K=湾曲定数 1/℃(1/℃) θ=温度定数 (度/℃) T-T0=温度差℃ (mm) R=ばね定数 (kgf-mm/deg) L=バイメタルの有効長さ(mm) N=総巻き数 t=バイメタルの厚み(mm) σ=曲げ応力 (kgf/mm2) b=バイメタルの幅(mm) r3=レバーの長さ (mm) r2=スパイラルの有効最大半径:厚み中心 (mm) r1=スパイラルの有効最小半径:厚み中心 (mm) |
ばね定数
ばね力
湾曲量
ばねの力
湾曲量
ばねの力
区分 | 材料 | E(JIS) kg/mm2 |
E(SMI) kg/mm2 |
G(JIS) kg/mm2 |
G(SMI) kg/mm2 |
線材 | ピアノ線(SWP*、硬鋼線(SW*)、オイルテンパー線 | 21,000 | 21,000 | 8,000 | 8,000 |
304系ステンレス線(SUS304WP*) | 18,500 | 19,800 | 7,000 | 7,000 | |
631系ステンレス線(SUS631WP*) | 20,000 | 20,500 | 7,500 | 7,800 | |
燐青銅線(C52*) | 11,000 | 10,600 | 4,500 | 4,400 | |
ベリリウム銅線(C17*) | 12,000 | 13,400 | 5,000 | 4,950 | |
板材 | 炭素鋼板(SK*) | 21,000 | 21,000 | 8,000 | 8,000 |
304系ステンレス鋼板(SUS304CSP*) | 18,500 | 19,800 | 7,500 | 7,000 | |
631系ステンレス鋼板(SUS631CSP*) | 20,000 | 20,500 | 7,500 | 7,800 | |
黄銅板(C2*) | 10,000 | 10,600 | 4,000 | 3,860 | |
燐青銅板(C5210*) | 11,000 | 10,600 | 4,500 | 4,400 | |
ベリリウム銅板(C1720*) | 12,000 | 13,400 | 5,000 | 4,950 |
SMIは、アメリカばね工業会の規格を示す。